指揮法をマスターすれば音楽の流れが体で感じられます。 |
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2003 3/19 山 崎 俊 道 |
アンサンブルを楽しまれる方が増えています。1人の指揮者の元に大勢の演奏者が一体となって演奏する様子は素晴らしいものです。しかし指揮者のいないサークルも見かけますし、指揮の役割もあまり知られてない様ですので今までの経験から指揮のワンポイントアドバイスをお話します。 アンサンブル等でお悩みの方は是非参考にして下さい。 |
演奏の流れは川の様
一度演奏が始まると、音はエネルギーを持った3次元上の生物かBach(バッハ、小川)の様に流れ始めます。川は上流で勢いが弱く中流では激流になり、下流の平坦部ではゆったりと流れを変えます。詳細に見ても刻々変化する川幅や深さによって水の流れはエネルギーや速度を変えるので流れは一瞬たりとも同じでは有りません。といっても運動エネルギーを持っているため、自分で急激にスピードを変える事も出来ません。
滝では一気に速度が早くなった様に見えますが、良く見ると最初は流れてきたのと同じ速度で落下を始め、序序にスピードを上げていきます。滝壷に落ちたら速度が急に無くなる様ですが、やはり渦を巻いてグルグル動きます。この様に、自由自在に変化する自然は凄いものだと感動しますが音楽の流れもこれと同じです。
指揮者がいなくても演奏は出来る
大勢で演奏する時テンポや曲想を皆で決めますが、約束通り弾ければ満足する人もいます。しかし音楽は川の流れの様に、絶えず変化する条件に如何に反応して展開していくかが醍醐味です。単に美しい音で予定通りに演奏しても必然性と反応の乏しい演奏は自然の川ではなく、用水路の流れの様で感動を生みません。
例えば1stが、ある滝の高さを想像して音を出す(エネルギーを与える)と、2ndがそれに反応して次の川幅を想像して音(エネルギー)に変化を与えます。あるいはレガートな旋律に反応して、それを際立たせるためにスタカート気味の伴奏をするとか。即ち全員がお互いに他の音を聞きながら影響し合って次の展開がコントロール出来れば指揮者無しでも生き生きした演奏になります。
しかしこの実現にはかなりの熟練・音楽性・感度が必要で、全員のレベルも同じである事が必要です。
指揮者の仕事とは
そこでこれらをコントロールしながら流れを運んで行くのが指揮者の仕事です。
有名なカラヤンや小沢さんは、いつも体から「オーラ」を発してると言われます。これは手品か、まじないの様に聞こえますが、体全体で表現している音楽そのものです。体全体で音を表現出来る指揮者は少ないですが音楽が理解出来ないと単なる「まじない」に見えてしまいます。
指揮者の仕事を纏めますと
☆楽譜のずっと先を読みながら直ぐ次の音を作っていくフィードバック作業をします。
今の音は左脳で、先の音は右脳でコントロールします。そして前へ前へと合図して行きます。
☆演奏されてる表現から演奏者の心を読み取り、他のパートに適切な次の音の情報を与えます。
☆流れている音量・音質の全体のバランスやテンポを調整します。
☆歌わせ方を指示したり適切な伴奏を合図します。
指揮のタイミングは
☆指揮棒を上げる時には次の展開のスピード、リズム、音量、音質、緊張感を表現し、下げる時に音が出ますが、その瞬間には次のステップを指示する作業に入っています。
指揮棒の動きは等加速度運動
指揮棒の動きは同じ速度(等速運動)ではありません。丁度ピンポン玉が落ちてきて跳ねる時の運動と同じです。つまり棒は常に速度が変化していますが、変化の割合は一定(等加速度運動)です。上がった時に止まる様に見えても決して止まっている事はありません。
何故同じ速度(等速運動)ではダメなのか。等速運動では行き着く先がどこなのか読めないのでテンポが判らないからです。ピンポン玉がはじける場合にはどこまで上がるのか読めるのでテンポが明白になります。
指揮を見るタイミングは指揮棒の上がる瞬間
折角指揮者がいても指揮を見られない人がいますが見るタイミングが合えば見られます。指揮棒が跳ね上がる瞬間に、指揮者は全ての情報を与えます。この一瞬にタイミングを合わせて見れば、ずっと指揮を見ていなくても音を出すタイミングは予測出来ます。
指揮棒が上がる時から下りて来るまで待っていると楽譜が読めません。
指揮者は音楽を感動にまで高める
指揮者は全員の感情表現をまとめるためにイメージを作ります。アルペジオは「爽やかな風が吹いているように」とか、装飾音符は「湖面の波がきらめく様に」とか。体で全ての音楽が表現出来れば良いですが、足りない部分は口を使って説明する事になります。
こうして音楽をリードしながらアンサンブルの演奏の流れを音楽的感動にまで高めるのが指揮者の本来の役割です。
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