運動力学の理論に基ずいた演奏メカニズムと独自の山崎メソッドでギターは自然に楽に弾けます。手や肩の力が抜ければ指は楽に動き、繊細な表現も自在です。技術は練習時間に比例して上達します。 |
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2003-3-10 初稿 2005-4-20 山崎メソッド追加 山 崎 俊 道 ギターをもっと楽に弾きましょう! 手の力を抜いて動かすメカニズムが分かれば技術習得は短時間 山崎メソッドと運動理論の基本的考えをご紹介致します |
力を抜いて弾くためのメカニズムは、天才ギタリストには不要ですが私の様な凡人には物理学の法則が良い先生です。運動理論を使って最も効率の良い基本メカニズムとそれをマスターするための山崎メソッドで力の入らない自然な奏法を生み出します。普遍的ですから誰にも当てはまります。単なる指の往復運動は元の位置に戻るだけでも無駄なエネルギーが必要です。 |
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マキ割りプロ、奥多摩小屋の雲取仙人(左)と |
1 山崎メソッドとは
☆ギター奏法の合理的なメカニズムを単純なメソッドで習得するトレーニング方法です。
基本技術をマスターするには、はっきりした目的を持った単純化されたプログラムが効果的です。
初心者のトレーニング ☆間接や筋肉を動かすのは一種のヨガです。ギターを持たないで右手の先で円を描く訓練をします。 ☆左手は指板の上で右手を使用しないで弾く訓練をします。 ☆慣れてきたら音を出します。開放弦の練習から始め、プログラムに沿ったトレーニングに移行します。 経験者のトレーニング ☆手の円運動を楕円に変え、動きを最小にして行きます。大リーグのイチロー選手がスイング角度を狭めて投球の見極め時間を延ばし、瞬時にスイングする手法で打率を上げましたが山崎メソッドも似ています。 ☆プログラムに沿ったトレーニングに移行します。 |
2 右手のメカニズム
☆マキ割りのプロは疲れない
私は20年、雲取山(東京都、2000m)に登っていますが宿泊する奥多摩小屋(山頂より200m下)では雲取仙人(岡部氏)に毎回リクエストされ登山客の前でギターを演奏します。仙人はギターファンであると共にマキ割りのプロです。マキ割のプロとは1時間マキを割っても疲れない人の事です。素人は力で割るので直ぐに疲れますが、プロはスピードを使います。疲れないマキ割りの原理をご説明致します。
仙人もギターファンです。 時々ワンポイントレッスンをしました。 |
☆運動エネルギーの法則
物理学では動いている物体の運動エネルギーは力(重量、質量)に比例し、スピードの2乗に比例します。つまり、力は2倍になってもエネルギーは2倍にしかなりませんがスピードは2倍になるとエネルギは4倍になります。そこで力よりスピードを使う事が有利で、スピードを最大にする工夫をすればエネルギーを有効に使え、運動は楽になります。
エネルギー=1/2 x M(力)xV2(速度)
=M(力)xα(加速度)
☆V(スピード)を最大にするには関節を時間差で動かす
斧を振降ろす時、私など素人は体の関節が固まって一体化してしまいますがプロはマキを割る時、全身の関節をバラバラに使います。斧を振り上げた瞬間には全ての関節の力が抜け、振り下ろす時、
1)まず腰に力を入れ、腰の関節を回転させ始める。
2)腰が少し回転したら、肩の関節を回転させ始める。
3)肩が少し回転したら、ひじの関節を回転させ始める
4)斧がマキにぶつかる直前で手首を回転させる。
5)斧がマキにぶつかる
1)から5)は連続して生じますが、腰の角速度(回転スピード)に肩、腕、手首の角速度(回転スピー)が次々と加わり、最後の瞬間には斧の先端速度は最大になります。
物理的に言い換えれば、素人では角速度が一定(角加速度ゼロ)だがプロは角速度が増して角加速度働き、力になる訳です。
☆最も力を入れる場所は腰
ここで重要なのは力を入れる場所です。
ハサミやクレーンを例にしますと、これらは先端で仕事をします。仕事をする先端部分は応力が少ないので細く、支える根元の部分は太く設計されています。ですから先端に力が入ると道具は壊れます。体も同じで根元の腰の部分に最も力を入れます。
☆M(力)を最大にするには一瞬
スピードだけでなく、更にM(力)も効率よく作用させるにはどうするか、斧の重量にプラスアルファの重量(力)を追加するのはどうするかです。
力を抜いて割る状態ではマキには斧の重量しか加わりせんが、ぶつかる瞬間に一瞬上半身に力を入れると(固めると)上半身の重量がプラスアルファで加わります。
☆ギターでは右手で弦を弾く運動と同じ
指先は3つの関節を持ち、この関節をマキ割りの様に順次動かして先端速度を最大にします。(あるいは手首が第四関節に相当する場合も考えられますが)
1)第三関節に力を入れて動かし始める
2)第三関節が少し動いた後、第二関節を動かす。
3)弦に触れる直前に一関節を動かす
これで指先は最大速度が出せます。
力を入れるポイントは手の平に近い第三関節です。弦との接触が終わると同時に力を抜きます。先には力を入れません。弾き終わった時には力が抜け、指が元の位置に戻ります。これで力の入らない奏法となります。
☆アルアイレとアポヤンドは同じ姿勢で
アルアイレ奏法とアポヤンド奏法のタッチは可能な限り同じ姿勢が有利です。
前記の様な奏法にすれば、指の先の動きは縦の楕円軌道を描きます。
いずれも軌道の最下部で弦に接触させます。
☆指の重心位置でエネルギーを弦に伝達する
指のエネルギーを弦に最大に伝えるためには、指の中心線で弦に接触することです。指の重心位置(中心)です。
☆各指は手のひらの中心に向かって動かす
指を無理に平行に動かそうとしないで手のひらの中心に向かって動かすことが自然に弾くポイントです。
☆野球のバットのスイングも似ています
ここではマキ割りを例にしましたが、野球もゴルフも同じです。腰、肩、腕、手首と回転中心位置を移動させると先端速度が最大となってエネルギーが最大に利用出来ます。更に打つ瞬間に上半身を固めて体の重量を一瞬バットにのせます。
ギターとの大きな違いは野球などは1回の運動で終わりますがギターは繰り返し運動する事です。ですから弾き終った瞬間に自動的に元の位置に有り、力が抜けて次の動作に入れる事が重要です。
☆ギターとマキ割りの違いは衝撃力
マキ割りや野球は運動エネルギーと衝撃力を使います。衝撃力を最大にするには、衝突時の時間を最小にすることです。これは体を一瞬固める事で相手側に大きな反発力が生じます。ビリヤードも同じです。一方ギターも良く似ていますが、衝撃力を利用すると弦が反発して良い音は得られません。又弾いた後、ただちに次の動作に移行するのが困難です。スピードを最大にして衝撃力の効果を弱めるには弦と接触する瞬間は指を回転させて弦を滑る様にさせる事です。これで接触時間が長くなり、衝撃を緩和出来、弾いた後で直ぐに元の位置に戻る事が出来ます。
衝突時の運動量は力積が一定のため時間に逆比例する
運動量=M(力)x V(速度)
力積=衝突時の運動量 x 時間(衝突時間)=一定
3 左手のメカニズム
☆左手も原理は同じです
ロック・クライミングの時、体に力が入っていると体の重心が足に真っ直ぐに乗らなくて、とても危険です。手や足も自由に動きません。左手も同じで、常に力が入りっぱなしの方がいらっしゃいます。全体の力を抜き、手の形を卵形にして(モノコック構造)必要な瞬間だけ第三間接に力を入れると、使い終わった時すぐに力が抜けて楽になります。
左指で一瞬押さえたり、スラー、トリルを弾いたりする時のメカニズムは右手と同じです。第三関節に一瞬力を入れ、スピードで弾きます。指先に力を入れると指は自由が利きませし、直ぐに力が抜けません。セーハも同じです。
4 楽器を持つ姿勢
☆右手と左手が力を抜いて最もよく動かせる姿勢を考えて全体の姿勢を決めて下さい。
5 初見力
☆楽器のフレット・ポジションを覚える事はもちろん大事ですが、今弾いている場所より先を見ながら瞬時に音を捉える事が大切です。今出てる音を聞くのは左脳で、先を見ながら音楽を創っていくのは右脳です。
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